リスクアセスメント作成の手順と考え方
リスクアセスメントを行う際に、どういう手順や考え方で作成するのか具体的に説明します。
まず当日の作業内容から危険なポイント、事故につながる可能性のあるものを全員で意見を出し合っていきます。
作業内容 | 具体的な作業の動き | 危険要因 |
---|---|---|
鋼構造物の据え付け | 玉掛け、地切り、クレーンで荷の巻き上げ、吊荷の旋回、据え付け | 吊荷、狭い場所、ワイヤー、据え付け、地切り、開口部,、段差 |
危険要因の文章の作り方
次に進行役の代表者が文章にしてまとめます。このときのポイントは
[いつ]+[なにが、なぜ、どのようにして]+[どうなる]
というようになるべく具体的な文章でまとめるようにしましょう。
ただしあまりこの形にこだわりすぎるとなかなか先に進めなくなる可能性があるので、あくまでニュアンス程度の意識で書いていきましょう。
危険のポイント |
---|
クレーン作業時、吊荷に集中していたので、開口部に気づかず転落する |
地切りの際に、吊荷が振れたので、作業員が挟まれる |
慌てて移動したので、段差に気づかず、つまずき転倒する |
荷の据え付け時、地面と吊荷の間に手を入れたので、挟まれる |
リスクの見積もり
災害が起こる可能性と起きた場合の怪我の程度を組み合わせてリスクの大きさを見積もります。
ここでは例として以下のリスクの評価表を使います。可能性と重篤度が交わるところがリスクの大きさになります。
危険の要因 | 可能性 | 重大性 | 危険度 |
---|---|---|---|
クレーン作業時、吊荷に集中していたので、開口部に気づかず転落する |
△ |
× |
3 |
地切りの際に、吊荷が振れたので、作業員が挟まれる |
○ |
△ |
2 |
慌てて移動したので、段差に気づかず、つまずき転倒する |
〇 |
〇 |
1 |
荷の据え付け時、地面と吊荷の間に手を入れたので、挟まれる |
△ |
〇 |
2 |
リスクの見積もりによって
「クレーン作業時、吊荷に集中していたので開口部に気づかず、足を踏み外して、転落する」
という危険要因が一番リスクが大きいということがわかりました。
次はこのリスクをどうすれば小さくできるのかを考えていきます。
この危険要因の補足
危険要因の狭い場所というのがポイントです。
合図者は地切りを行って吊荷の安定を確かめた後、設備や構造物に吊荷が当たらないように的確にクレーンに指示をしなければならないので、どうしても吊り荷に意識が集中して足元がおろそかになってしまいます。
リスクの低減
リスクアセスメントを行う上でのリスクへの対策の考え方は、どうすればリスクをなくせるか、小さくできるのかというところに焦点をおいて検討していきます。
作業員個人による保護具による安全対策は、危険要因のリスクを低減させるわけではないので注意しましょう。
危険な作業の中止、変更の検討
まずはじめに考えるのはリスクの大きな作業は取りやめることができないか、変更できないか検討することです。
どういうことかというと
「クレーン作業時、吊荷に集中していたので開口部に気づかず、足を踏み外して、転落する」
というリスクはそもそもクレーン作業をするからリスクが発生するのであって、クレーン作業がなければリスク事態も消えてなくりますよね。
なのでクレーン作業を取りやめるか変更することはできないか検討しましょうということです。これは難しい場合がほとんどだと思います。
作業の中止や変更ができなければ次に工学的対策を検討します。
工学的対策
工学的対策というのは、開口部に近づくと転落というリスクは大きくなるので柵などで囲って物理的に開口部に近寄ることができないようにするということです。
現場の状況や環境によって実施できる対策は変わるので、よりリスクの低減効果が高いものになるようみんなで意見を出し合いましょう。
対策なし…リスク高
何も対策のしていない開口部は当然転落のリスクが非常に高いです。
バリケードやカラーコーンで囲う…リスク高
バリケードやカラーコーンで開口部を囲う対策は人間がぶつかったら簡単に突破できるのでリスクは高いままです。
パイプで柵を作る…リスク中
単管パイプとクランプで柵を作った場合はパイプが固定されていれば人間がぶつかっても大丈夫ですが隙間があるのでリスクは中です。
コンパネ等で開口部を塞ぐ、フェンスで柵をする…リスク小
最後に開口部をコンパネ等で塞ぐ、もしくはフェンス等で囲い門扉をつけて出入りできるようにする対策です。
これはリスクに対しての低減効果が高い対策方法ですが、開口部を溶接等で完全に埋めたわけではないためコンパネが割れる等の可能性がゼロではないので残存リスクは残ります。
管理的対策
管理的対策とは教育訓練や立ち入り禁止表示などの方法でリスクを低減させるもので、新しい現場に入ったときに受ける新規入場者教育も管理的対策の一環といえます。
リスクの低減効果は工学的対策よりも弱いので工学的対策+管理的対策というように使えば残存リスクをさらに抑え込むことができます。
個人用保護具の使用
作業員個人による保護具を使用した対策は工学的対策+管理的対策でリスクを除去しきれない場合の最終的な対策方法になります。
リスクアセスメントの例
危険の要因 | 可能性 | 重大性 | 危険度 |
---|---|---|---|
クレーン作業時、吊荷に集中していたので、開口部に気づかず転落する |
△ |
× |
3 |
リスクの低減措置 | 可能性 | 重大性 | 危険度 |
---|---|---|---|
開口部をコンパネ等で塞いで周囲を単管パイプを組んで囲う |
〇 |
〇 |
1 |
開口部で転落の危険があることを明示する |
まとめ
リスクとは
リスク=怪我や事故になる可能性
足場作業だったら転落するリスク、ガス切断なら火傷を負うリスクというように、作業にはすべて何かしらのリスクが存在します。
すごく高い場所の作業でも落ちるところがなければ別に危険ではないですよね。
もしもエレベーターが箱型ではなくパイプのてすりのみだったら転落するリスク(可能性)が発生します。エレベーターが安全なのは転落するリスク(可能性)がないからです。
リスク低減措置の優先順位
計画の変更や取りやめ
↓
工学的対策
↓
管理的対策
↓
保護具の使用
危険予知活動とリスクアセスメントのちがい
KYK(危険予知訓練)、KYT(危険予知活動)では保護具や安全帯といったような、リスクを残したまま個人の注意力に頼った安全対策が主流でした。
リスクアセスメントでは災害発生の原因となるリスクをなくす、または小さくしようという取り組みなので危険要因に対する対策の考え方がリスクアセスメントとKY活動のちがいです。
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントとは、わかりやすくいうと重大事故を起こそうとしても起こせないような環境にしようという取り組みです。